ドリーベルを覚えているかい? |
監督:エミール・クストリッツァ
出演:スラヴコ・シュティマッツ(ディーノ)
リリャナ・ブラゴイェヴィチ(ドリー・ベル)
(1981/ユーゴスラヴィア/カラー/109分)
エミール・クストリッツァ監督の処女作で日本初公開作品だ。そのことを知らずに観たとしても誰もが「なんかエミール・クストリッツァと似た味がするな」と思うに違いない。近頃あまり聞かなくなったが、かつては「処女作にはその作家のすべてが揃っているのだ」などという常套があった。確かにそうだなと思わせる作品だった。ただ、ぼくの知っている監督のこれでもかと濃く味付けられたディテールが少々涼やかになっているのは、処女作ならばそういうものなのだろうと考えればいい。公開に40年以上かかったのは、ユーゴスラビアの内戦による混乱で著作権が棚上げ状態になっていたかららしいのだがぼくにはよく分からない。
舞台はサラエボ。主人公は少年ディーノ、3人兄弟の次男だ。父親は熱烈な共産主義者で子供たちを集めては政治的議論をすることを好む。その際、書記は三男が務める。ディーノは離れにある部屋でウサギと催眠術に熱中している。地区の委員会か何かの文化的方針でバンドメンバーに選ばれてギターの練習も始まる。あるとき「皮剝ぎ」と呼ばれる地元のゴロツキに女を匿ってほしいといわれ、ドリー・ベルを自室に入れることになる。ドリー・ベルは地区の映画鑑賞会で観たストリッパーだ。互いに惹かれ合うなか、彼女は「皮剝ぎ」に連れ去られてしまう。そんなストーリーだ。
映画の魅力は、同監督の大傑作『アンダーグラウンド』に及ぶべくもないとぼくは思うのだけれど、それなりに引き込まれた。エビスガーデンシネマでは『アンダーグラウンド』も4Kで同時上映されている。なんとか都合をつけたいと思っているのだが。
2023年10月28日 エビスガーデンシネマ